研究内容


シュート再生の分子機構の解明




シュートとは?


葉と茎を含む植物の地上部のこと








これからの発展が期待される 植物分子生物学という研究分野。

植物は、1つの細胞からその個体をつくり出すことができる。 動物の場合、胚性幹細胞と呼ばれる特殊な細胞からはクローン動物のような個体をつくり出せる可能性があるが、通常の細胞にそのような能力はない。

「植 物細胞には、分化全能性という性質がある。ですから植物は、オーキシンとサイトカイニンと呼ばれる植物ホルモンを培地(固形栄養分)に加えることで、 組織切片から根やシュート(茎と葉)の器官を再生させることができる。どちらになるかは、植物ホルモンの濃度比で決まります。中間の濃度比では、未分化の 状態で細胞増殖を続けます。」

組織培養による植物の再生は、50年ほど前から知られた現象。いろんな分野で利用もされている。しかしその仕組みは、最近になるまでほとんど分かっていなかった。

「特に分子レベルでの研究は、まだ始まったばかり。植物分子生物学という研究分野は、これからの発展が期待されています。」



植物の細胞分化を制御する ESR1遺伝子の存在を明らかに。

坂野研究室ではいま、シロイヌナズナをモデル植物に、ESR1遺伝子をターゲットにした研究が続けられている。ESR1は、我々がその存在を明らかにした遺伝子でもある。

「今までの研究で、ESR1はシュートへの分化に必要な遺伝子群のスイッチになっていることが分かりました。ESR1に制御される遺伝子群を明らかにし、どんなメカニズムで作用しているのかをさらに解き明かすことができれば、他の植物への転用も容易になる。」

シロイヌナズナの場合、ESR1遺伝子を強制的に発現させると、シュート(葉と茎)の形成効率が10~100倍に上昇する。 組織培養が難しい植物種――たとえば組織培養が難しい植物などへの応用が可能になれば、遺伝子組み換え植物の開発や生産に大きく貢献する。

「研究対象は植物ですが、実際に向き合っているのはタンパク質と核酸。だから植物学ではなく、植物分子生物学なんです。」

研究をより身近に感じてもらうために、我々は花卉植物を研究の対象に加えた。 究極の目標は、遺伝子組み換えにより、花卉植物の花の色や形をデザインすること。



学術論文

・Matsuo, N. and Banno, H., Arabidopsis ENHANCER OF SHOOT REGENERATION 2 and PINOID are involved in in vitro shoot regeneration. Plant Biotechnolol., 29, 367-372, 2012.

・Matsuo, N., Makino, M. and Banno, H., Arabidopsis ENHANCER OF SHOOT REGENERATION (ESR)1 and ESR2 regulate in vitro shoot regeneration and their expressions are differentially regulated. Plant Science, 181, 39-46, 2011.

・Nomura, Y., Matsuo, N., Banno, H., A domain containing the ESR motif in ENHANCER OF SHOOT REGENERATION 1 functions as a transactivation domain, Plant Biotechnol., 26,395-401,2009

・Matsuo, N., Mase, H., Makino, M., Takahashi, H., Banno, H., Identification of ENHANCER OF SHOOT REGENERATION 1-upregulated genes during in vitro shoot regeneration, Plant Biotechnol.,26.385-393, 2009

・Matsuo, N. and Banno, H., Arabidopsis transcription factor ESR1 induces in vitro shoot regeneration through transcriptional activation, Plant Physiol Biochem., 1045-1050, 2008

・Mase, H., Hashiba, M., Matsuo, Banno, H., Expression patterns of Arabidopsis ERF VIII-b subgroup genes during in vitro shoot regeneration and effects of their overexpression on shoot regeneration efficiency, Plant Biotechnol., 24, 481-486, 2007

・Banno, H., Mase, Y., Maekawa, K., Analysis of functional domains and binding sequences of arabidopsis  transcription factor ESR1. Plant Biotechnol., 23, 303-308, 2006

・Ikeda Y, Banno H, Niu QW, Howell SH, Chua NH. The ENHANCER OF SHOOT REGENERATION 2 gene in Arabidopsis Regulates CUP-SHAPED COTYLEDON 1 at the Transcriptional Level and Controls Cotyledon Development. Plant Cell Physiol., 47, 1443-1456, 2006

・Hiroharu Banno. Overexpression of AtEBP inhibits in vitro shoot regeneration of arabidopsis. Annual Report of Research Institute for Biological Function, 4, 15-18, 2004

・Banno, H., Ikeda, Y., Niu, Q.-W. and Chua, N.-H., Overexpression of Arabidopsis ESR1 induces initiation of shoot regeneration. Plant Cell, 12, 2609-2618, 2001



講演、シンポジウム、学会発表

・松尾巨樹、坂野弘美2012年8月.第30回日本植物細胞分子生物学会(奈良).

「シュート再生におけるPINOIDの機能解析」

・松尾巨樹、坂野弘美2011年9月.第29回日本植物細胞分子生物学会(福岡).

「シュート再生過程におけるESR1/ESR2の発現解析」

・牧野美保、松尾巨樹、坂野弘美、2010年9月. 第28回日本植物細胞分子生物学会(仙台).

「シュート再生過程におけるESR1/ESR2の発現パターン解析」

・松尾巨樹、牧野美保、坂野弘美、2010年9月. 第28回日本植物細胞分子生物学会(仙台).

「シロイヌナズナの花器官形成におけるESR1/ESR2の遺伝的相互作用」

・松尾巨樹、牧野美保、野村佳宏、坂野弘美、2009年7月.第27回日本植物細胞分子生物学会(藤沢).

「シロイヌナズナESR1のターゲット遺伝子の同定」

・松尾巨樹、坂野弘美、2008年9月.第26回日本植物細胞分子生物学会(大阪).

「シロイヌナズナESR1の転写制御活性」

・松尾巨樹、間瀬裕美、橋場実紀、坂野弘美、2007年12月.第30回日本分子生物学会(横浜).

「シロイヌナズナ ERF B-1b サブファミリー遺伝子の培養時のシュート分化における役割」

・間瀬裕美、橋場実紀、松尾巨樹、坂野弘美.2006年12月.日本分子生物学会2006フォーラム(名古屋).

「シュート形成過程におけるシロイヌナズナ ERF B-1b サブファミリーの発現パターン」

・間瀬裕美、橋場実紀、坂野弘美.2006年9月.第24回日本植物分子生物学会(筑波)

「シロイヌナズナ ERF B-1b サブファミリー遺伝子による組織培養におけるシュート分化制御」

・坂野弘美・Nam-Hai Chua.シロイヌナズナESR1のシュート形成における機能.

2002年7月.第20回日本植物細胞分子生物学会奈良大会・シンポジウム(於 奈良)

・坂野弘美・Nam-Hai Chua.シロイヌナズナESR1のシュート形成における機能.

2002年3月.日本植物生理学会2002年度年会(於 岡山)