大塚研究室の研究内容

ミクロの環境問題−環境ストレス応答−

 生物はさまざまな環境ストレス(たとえば温度、放射線、化学物質、微生物の感染、など)のなかでうまく生きていくことができます。われわれの体を構成している一個一個の細胞が、このような環境ストレスにさらされたときに、細胞レベルでうまく対処することができるからです。これが細胞レベルでの環境ストレス応答という学問分野です。環境生物科学科のなかではちょっと異質かもしれませんが、環境問題といってもマクロな視点ではなく、われわれの体の中で起こっているミクロの環境問題を取り扱っていることになります。

 中部大学応用生物学部環境生物科学科は、マクロからミクロまで、「環境問題」をトータルに学ぶことができる他に例を見ない学科です。

 一般的に「環境問題」といえば、①温室効果ガス(二酸化炭素やメタン)による地球温暖化、②環境中に放出されたさまざまな人工的な化学物質による生態系への影響(ヒトを含むすべての生物への生体影響)、③工場や車からの排出ガスに伴う酸性雨や光化学スモッグ、④ゴミ処理問題(一般家庭ゴミおよび産業廃棄物)などがあります。世界の人口増加にもその一因がありますが、これらすべて、人類が豊かな生活をするために作り出してきた科学技術文明の産物です。この「美しい地球」を未来の世代、つまり自分たちの子孫に送り届けるためにも、政治、経済、教育、科学などすべての分野の英知を結集して人類全体で取り組むべき課題であります。

 一人一人の人間ができることは限られており、無力感にとらわれることもありますが、しかし手をこまねいていると「手遅れ」になることになります。そのためにもまず大事なことは、「環境問題」に対する正しい知識を身につけることです。そして自分ができることから、できるだけ環境に負荷をかけないような生き方をしていくことだと思います。

 応用生物学部環境生物科学科では、基礎的な学力とともに、「環境問題」に対する正しい知識を学習するためのカリキュラムを用意しています。

 たとえば、生理学的観点からみると、生物(特に動物)は生きていくために、食物を摂取し、酸素を吸収して二酸化炭素を排出しています。つまりエネルギーを消費し、環境に負荷をかけていることになります。これは生きていくために避けられないことです。また、エネルギー消費という観点からみると、先進国に住む人類の一人当たりについてみると、ヒトと同じくらいの大きさで、自然界に住む恒温動物と比べてみると、ヒトは約50倍以上もエネルギーを消費しているといわれています。このことが環境に大きな負荷をかけていることになります。そのほか、さまざまな観点から環境問題に関して学習することになっています。いまほとんどの企業や会社は、二酸化炭素やゴミの排出量の削減に取り組んでいます。

 当学科の学生は、どのような分野の会社に就職しても、中部大学で学んだ環境問題に関する広範な知識を生かして活躍することができます。

大塚研究室の研究内容

●熱ショックタンパク質(分子シャペロン)の構造と機能に関する分子細胞生物学的研究

●分子シャペロン誘導剤の探索

●ガン温熱療法の基礎研究

●分子シャペロンによる神経変性疾患の予防と治療のための基礎研究

●分子シャペロンによる体質改善・健康増進に関する研究

図3 HSPのさまざまな機能
これまで紹介したHSPは、タンパク質の防御だけでなく、タンパク質の輸送(タンパク質は細胞中を行き来しています)の補助、アポトーシス(細胞の自殺行為)への関与や、免疫機能への関与も示唆されています。

 また、HSP防御因子としても機能しています。例えば、細胞にHSPが大量に合成されていると、極めて強い熱ショックにも耐えることが出来るようになります(温熱耐性と言います)。壊れたタンパク質が原因となる病気に対して、HSPを入れるとその病気の症状が緩和されます。まだまだご説明しきれないほどさまざまな機能があります。

このように、私たちの体にとってストレスタンパク質、HSPは非常に有益なタンパク質なのです。

図2 ☆の正体・・・それはHSP!
ストレスに曝された細胞の中、そこでは一生懸命働いているタンパク質が危機に曝されています(タンパク質の変性)。そのタンパク質の危機を察知して☆の登場!この☆はHSPと呼ばれ、危機に曝されたタンパク質を守る役目をしています。

ストレスに対して体(細胞)はどのように対処するのか?

 体(細かく言えば細胞)にとってのストレスといっても様々なものがあります。例えば、温度や放射線、化学物質、微生物感染などが挙げられます。私たちが日常、生活している環境のちょっとした変化が、体(細胞)にとってはストレスとなってしまうのです。

皆さんは、心身的なストレスがたまってしまったらどうでしょうか?イライラしたり、胃が痛くなったり・・・いろいろな不具合が生じてきますよね。しかし、その状態ではいけないから、私たちは息抜きや気分転換などの対処をして心をリフレッシュしてストレスを解消しようとします。

では、細胞にストレスが加わってしまったらどうなるのでしょうか?おそらく細胞は機能を果たせなくなってしまうでしょう。細胞が機能してくれないと私たちは生きていけません。しかし、そういったストレスに細胞が曝されても、私たちはうまく生きていますよね?それはなぜなのでしょう?答えは細胞もストレスに対して対処をしているからなのです。これを「ストレス応答」と言います。ストレス応答とは、ストレスに曝されると自分自身が危険な状態になってしまうので、それに対して自分自身を守る生体防御機構のひとつです。

 では、細胞はストレスに対して実際にどのような応答をしているのでしょうか?ここでは熱ストレスを例にして見てみることにしましょう。細胞は通常37℃で生育しています(私たちの体温も同じぐらいですね)。この細胞に510℃高い温度(これがストレス!)を加えると、細胞の中では劇的な変化が起こります。その変化とは何か?それは、細胞が危険な状態を察知してこれまで合成されていなかったあるタンパク質が大量に合成されてくるようになります。このタンパク質自身がストレスに応答して作られ、ストレスから細胞を防御している主役なのです。

図1 ストレス応答とは?

日頃、いろいろなストレスに曝されている細胞。困っちゃいますね・・・
そこで細胞、☆(とあるタンパク質のこと)をいっぱい作り出しました。←これがストレスに応答したということ。
果たして☆の正体は?結局、☆はなにするの??

H:高校生の皆さんへ

ストレスタンパク質とは?

 このタンパク質、気になりませんか?では、お教えしましょう。その名も、「熱ショックタンパク質(heat shock proteinHSP)」と言います。これは、熱ショックで大量に合成されてくるタンパク質なのでこのような名前が付けられています。しかし、このHSP、熱だけでなくほかのストレスでも合成されてくるのです。なので、広い意味で「ストレスタンパク質」とも呼ばれています。

 では、細胞はどのように危険を察知し、HSPを合成するのでしょうか?その引き金は、壊れたあるいは壊れかけたタンパク質です。タンパク質とは私たちの体を構成する主成分の一つなのですが、タンパク質が壊れてしまうと細胞にとって不具合が生じてきます。先ほどから述べている様々なストレスは、このタンパク質を壊れさせてしまうため、これが引き金となってHSPが合成されてくるのです。

 合成されてきたHSPは結局何をどうしているのでしょう?それは、壊れたタンパク質は細胞に不具合を与えるため、そのタンパク質を処理するように働いているのです。実際には、タンパク質をこれ以上壊れないように防護したり、壊れかけたタンパク質を元どおりに直したり、壊れたタンパク質を分解してなくしてしまったりという機能を果たしています(分子シャペロン機能と言います)。