タンパク質の科学と「クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)」を結ぶ糸

 
 

森山について


名前: 森山 龍一

性別: 男性

誕生日: 5月5日(本当です)

出生地: 名古屋市

学位: 農学博士

最終学歴: 名古屋大学大学院生命農学研究科

研究領域: 応用生物化学,応用微生物学

現在の所属: 中部大学応用生物学部食品栄養科学科




連絡先

Email: moriyama@isc.chubu.ac.jp

内線: 5555

研究室:  33号館4階



私の好きなもの


生き物: 子供の時から生き物が好きで、犬、猫、カエル、九官鳥、セキセイインコを始め色々と飼ってきました。現在自宅でネコを5匹飼っています。

本: 読書家とまでは到底言えませんが、昔から本を読むのが好きです。特に自分の専門以外の本についつい手が伸びてしまいます。


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研究業績(印刷物)

高校生・在学生の皆さんへ

卒業後の進路



下記の図をクリックすると拡大されます。

 

生命現象を担う物質としてのタンパク質研究を介して社会に貢献する


●食品の変敗や食中毒の誘因となる細菌胞子発芽の機構解明と発芽の「バイオコントロール」

 好気性バシラス(Bacillus)属や嫌気性クロストリジウム(Clostridium)属の細菌は栄養源の枯渇などの外部環境の悪化に伴い栄養細胞とは機能的・形態的に全く異なる耐久性細胞である胞子(スポア(spore)、芽胞とも言う)を形成し、外部環境が好転するまで休眠状態、すなわち代謝の凍結した状態、で存在することが知られています。米国ユタ州のソルトレイク(塩湖)から採取された二畳紀(2億5千年〜4億年前)由来の岩塩内に閉じこめられたままで休眠状態を保持していた胞子の存在が報告されているなど、休眠胞子は(火山火口近辺の温泉や海底火山の火口付近などの高温・高圧下で生命活動を営む極限生物を除き、私達の身の回りで生きている)生命体の中で最も耐久性(耐熱・耐薬剤性)に優れた細胞と考えられます。しかし、一見矛盾するようですが休眠胞子は栄養素(例えばL-アラニンのようなアミノ酸)などの発芽誘起剤との接触により数秒から数分で発芽(germination)し、発芽後生育(outgrowth)期を経て栄養細胞にもどり栄養増殖するようになります。発芽とは特定の誘起物質によって始動され休眠胞子の持つ特性を不可逆的に喪失する胞子の一連の分解過程と定義されますが、発芽の時点では未だ代謝活性は回復せず胞子に既存の複数の発芽関連酵素の活性化が逐次的に生じることによって発芽が進行するものと考えられています。この過程で脱水状態に近い状態にあった胞子コア部分は水和(胞子の含水量は乾燥重量当たり0.3-0.7gで栄養細胞の3-4gと比較して極端に低い)し、生合成系を含む代謝系が蘇生する発芽後生育期を経て栄養細胞となります。現代の日常生活における胞子形成細菌の汚染は、それが食品や医薬品に起きた場合には通常の加熱滅菌では容易に殺傷することができないので、食品の変敗や食中毒、感染症などの深刻な社会問題を引き起こします。また、近年生物テロとして世間に深い衝撃を与えた「白い粉の恐怖」の正体は炭疽菌(Bacillus anthracis)の胞子そのものであり、この他にも生物兵器として利用が想定される胞子形成細菌は数多く知られています。したがって、細菌胞子の耐熱性や発芽の機構解明とその人為的制御(「バイオコントロール」)は、私達人類の「食と健康」にとって極めて重要な課題であると言えます(左図1番上)。

 細菌胞子の発芽は、胞子内に既に存在する発芽関連酵素の逐次的活性化に基づいて進行する代謝の関与しない過程である。発芽は短期間で終了し、なおかつ形態学的ランドマーカーも少ないため、その基礎的理解の進展は最近まで閉ざされていて、むしろ発芽に伴う耐熱性や胞子光屈折性の消滅など、発芽に伴う生理的現象の変化に着目した実際的・応用的研究が先行し、これらの分子機構は不明のまま現在に至っています。もちろん、これらの実際面での研究が胞子の殺滅やその制菌・静菌に関して多くの重要な情報を提供したことは評価されるべきで、これらの現象論的研究から演繹された発芽モデルや発芽の分子機構が提唱され、有益な仮説を生んだことも事実です。しかしながら、それらの仮説が実証もなく定説の如く一人歩きしているのも現実です。

 近年私達の研究グループは、胞子発芽の主要な生化学的事象であるコルテックス(胞子に固有の化学構造を持つペプチドグリカン層)の分解に関与する複数の酵素を、食中毒菌であるセレウス菌(Bacillus cereus)及びウェルシュ菌(Clostridium perfringens)胞子から活性を保持したままの状態で単離・同定することに世界に先駆けて成功し、その性質や構造および遺伝子解析を通して発芽機構の分子論的解明の端緒を開いてきました。左図2番目に私達が現在提唱している胞子発芽の分子モデルを、左図3番目に私達がこれまでに明らかにしてきた細菌胞子形成期における発芽関連酵素群の遺伝子発現と細胞内局在化の機構モデルを示します。私達はこれらの研究成果を基盤としてさらに新しい発見を求めながら細菌胞子の発芽機構の分子レベルにおける全容解明を目指すとともに、得られた知識を応用することによって食品の変敗や食中毒などの感染症を人為的に制御(「バイオコントロール」)して私達を取りまく「食と健康」環境の向上を試みようとしています(左図1番上)。


●動物細胞における有機陰イオンの輸送体タンパク質の構造・機能解析と私達の「健康な生活」の維持

 私達生物の基本となる細胞は細胞膜によって取り囲まれていますが、細胞膜は外界と細胞内の物理的なバリアーとして物質の選択的な出入りを調節するという重要な役割を果たしています。細胞膜における物質の選択的な出入りの多くは、輸送体と呼ばれるタンパク質によりおこなわれています。私達は現在、遊離脂肪酸などを主とする有機陰イオンの細胞への取り込みや、それらの物質の細胞からの排出に関わるタンパク質の研究を行っています。

 遊離脂肪酸はミトコンドリア内で酸化されて生体エネルギーであるATPを生産するための材料であり、筋肉組織細胞内で消費されるのに対して脂肪組織細胞内では中性脂肪として蓄積されます(左図4番目)。いずれの場合も細胞膜における脂肪酸の出入りに関わる輸送体タンパク質は重要な役割を果たしており、これが正常に機能しないと様々な病気を引き起こす要因となります。

 そこで私達は、これまでにモデル動物であるマウス個体やマウス由来の培養細胞を用いて、細胞内の脂質代謝の変化と連動する遊離脂肪酸輸送体タンパク質の遺伝子発現制御の機構に関する研究を進めてきました。また、脂肪酸や薬物の輸送にかかわるタンパク質に代表される膜タンパク質の構造・機能を解析するための、今までにない新しい研究方法の確立を試みています。


●タンパク質高生産菌であるブレビス菌のゲノム解析とその物質生産への応用

 私達の生活は、インスリンなどのホルモンに代表される医薬品からデキストラン分解酵素やリパーゼなどを含む衣料用洗剤に至るまで、微生物によって生産された酵素・タンパク質を含む多くの製品に取り囲まれていると言っても過言でありません。このような微生物による物質、特に酵素・タンパク質生産の重要性はますます高まっています。加えて、ヒトゲノム計画に代表されるように一生物種の遺伝情報を網羅的に解析することによって生命現象を解明することを目的とするゲノム生物学の近年における興隆は、微生物による物質生産といった応用研究にも大きな影響に与えつつあるのが現状です。

 このような現状に呼応して、現在独立行政法人製品評価基盤機構を中心として大学および企業がコンソーシアムを形成して、「タンパク質の高生産・高分泌を特色とするグラム陽性菌で産業レベルでの物質生産に用いられているブレビス菌(Brevibacillus brevis)のゲノムを解析することにより、タンパク質生産能、高分泌能の秘密を明らかにすると共に生産性をより向上させる」ことを目的とした研究プロジェクトが進められています。私達はその一員として、タンパク質高生産菌であるブレビス菌のゲノム上にコードされている酵素・タンパク質のうち、タンパク質の立体構造形成(フォールディング)に関するものの基礎科学的知見を得ることを目的とした研究をおこなっています。これは、酵素・タンパク質が正常に機能を果たすためには各酵素・タンパク質に固有の立体構造を形成する必要があるからです。もちろん、それらの知識を応用して物質生産の向上に貢献することを最終の目的としています。


●おわりに

 上記の研究テーマを見て分かっていただけると思いますが、私達は微生物・動物・植物を問わず私達の日常生活を取りまく様々な興味深い生命現象を対象にして、それらを担うハードウェアとしてのタンパク質が働く仕組みを分子のレベルで明らかにし、得られた知識を応用して私達の「クオリティ・オブ・ライフ」の向上に役立てることを目指しています。しかしながら、各研究においてはまだまだ未解明の事実が多く、これから参加してくれる若い学生諸氏の興味や努力が今後の研究発展に重要な原動力になると私達は考えています。また、私達は上記研究に関する指導や担当する種々の講義などをとおして社会に貢献することのできる人材の育成に努力していきたいと思っています。