はじめに

 当研究室は応用生物学部の食品栄養科学科に所属しており、応用生物学部の共通の基盤である先端バイオ研究を「食」の視点から進めています。つまり食品栄養科学科の大きな柱の一つである食と健康に関わる教育、研究分野を担っています。

 さて、私の専門は食品機能学、栄養生化学という分野です。現代社会においてこれほど「食」について注目されている時代はありません。我々を取り巻く食の状況は「不足」の時代から「充足」の時代を経て「飽食」の時代である、といわれるようになり久しいですが、残念ながら食に代表される環境因子が大きく関わる疾病の増加は、深刻であり、早急な対策が必要であることは疑う余地はないでしょう。

 最近の生命科学の進歩により「食」の研究も大きく変わってきました、ヒトゲノムの解明が行われ、実験動物として身近なマウスやラットのゲノムの解明もなされてきました。最近ではヒトの遺伝子多型の解析が進み、個々の遺伝子の違いから、例えば「太りやすい体質」、といったことも説明が可能になっています。このことは個別栄養の実践、テーラーメイド食品の開発などへと発展しつつあります。一方でDNA塩基配列を音符に例えると、音符の並び方の違いのみでは、「体質」を説明できないことも分かってきました。どのように強弱をつけたり伸ばしたりして演奏するかが重要である、と言われるようになっています(エピジェネティクスという研究分野が盛んになっています)。

 現代社会で問題となっている疾病の多くは多因子疾患であり、これは環境因子、特に食と栄養が大きな影響を及ぼします。まさに食の立場から予防を目指してこの問題に立ち向かうことが必要とされています。我々はこのようなスタンスで教育、研究を行っています。

 では、食品機能学とはどのような学問分野でしょうか。食品機能学は先端のバイオに関する知見をもとにして、食品のもつ生理機能性を明らかにし、これを我々の健康に役立てるという、いわば「食」の先端バイオサイエンスです。その実現のためには生化学や分子生物学、生理学、細胞生物学に関する基礎が必要になりますし、栄養学や食品学はもちろん、薬学、病理学といった分野の知識やセンスは重要です。このようなことからも我々の携わっている領域はもっとも多くの学問分野が交差する総合・複合領域であるといえるでしょう。

 さて当研究室はゼロからのスタートでしたが、当初と比較すると何とかできるようになりました。今後スタッフの充実も含めたより良い環境づくりを進め、学生の皆さんにとって意義ある研究生活になるように努力したいと思います。

 どうか食品・栄養機能科学研究をしたいと考えている全国の学生の皆さんにこのホームページを見て頂き、当研究室での研究に参加して下さい。ぜひ我々と一緒に名古屋近郊のすばらしい環境の中での学生生活、研究生活を満喫してほしいと思います。

津田 孝範