研究紹介   悪環境耐性/高機能性作物の創出に向けて

 

 植物の生産性は、強光、乾燥、温度、塩、重金属、オゾンなどの非生物的、あるいは病害などの生物的な環境ストレスによって大きく低下します。もし、そんな劣悪な環境下でも生育可能なスーパー植物を作ることができれば、温暖化や砂漠化、食糧危機などの地球規模の大問題を克服するための大きな手段となり得ます。

 一般的に、すべての生物は変化の大きな自然環境のもとで生活しています。動物はこれらの環境の変化を感知して、環境ストレスのない場所に逃避することができますが、植物はその生育場所が固定されているという特性から、光や温度、乾燥、栄養条件など外界のさまざまな環境変化に巧みに対処していかねばならなりません。

 

 吉村研究室では、劣悪な環境下でも生育可能で且つ優れた栄養特性を持つスーパー植物の創出を目指して、植物のシロイヌナズナやイネ、藻類のユーグレナなどを用いて、以下のテーマについて研究しています。(詳細は各項目をクリック)

  1. 箇条書き項目 植物のアスコルビン酸(ビタミンC)生合成経路の制御機構

 〜 植物はビタミンCの合成をどのように制御しているのか?

  1. 箇条書き項目 植物Nudix hidrolaseの生理機能

 〜 ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、リボフラビン(ビタミンB2)などの有用物質に対する分解酵素はどの様な役に立っているのか?

  1. 箇条書き項目 植物のDNA突然変異抑制機構

 〜 過酷な環境でも生育可能な植物はどの様にして突然変異を防いでいるのか?

  1. 箇条書き項目 微細藻類ユーグレナのビタミン類生合成およびストレス耐性機構

 〜 話題のユーグレナの優れた栄養特性や環境ストレス耐性能の仕組みを明らかにする!

  1. 箇条書き項目 植物のレドックス制御機構とその生理的意義

 〜 ビタミンCやNADHなどにより制御される細胞内の酸化還元状態はどの様な役割を担っているのか?

  1. 箇条書き項目 転写後調節機構による植物の環境ストレス応答制御

 〜 選択的スプライシングと呼ばれる非常に合理的な遺伝子発現制御機構を分子レベルで明らかにする!


 これらの研究を通した教育により、最新技術に触れながら、バイオサイエンスのおもしろさを体感してもらいたいと思っています。難しそうに見えますが、実際に自分の手で実験すれば教科書を読んでわからなかったことも理解出来ます。大事なのは意欲です!!大学生活最後の一年間、真剣に取り組んで見ませんか? 勉強や研究だけでなく、遊びも含めてすべて全力で取り組むことのできるヒトを歓迎します。大学院生志望者も大歓迎です。興味のある人は気軽に話を聞きに来てください。


吉村研究室の研究内容

 近年、こういった環境ストレスが植物を枯死させる原因には、全てのストレスに共通して 活性酸素種(ROS) の蓄積が関係していることがわかってきました。 ROSはタンパク質、脂質、核酸などの細胞内の機能高分子を非特異的に酸化する生体毒性物質としてよく知られています。

 そのため、植物は動物が持たない多くの有用分子を細胞内で作り出し、ROSに対抗することで変化の大きな自然環境に適応しています。これらの有用分子のいくつかは我々にとって必要なビタミン類などの栄養素としても役立っています。すなわち、我々は植物(作物)を食べることで、植物自身が生きて行くために体の中で作り出した成分を、分け前としてもらって生きていることになります。

 一方近年、ROSを介した細胞内の酸化還元(レドックス)状態の変化は、様々な生理機能発のためのシグナルとして機能していることも明らかになってきています。すなわち、ROSは毒としてだけではなく、ストレスに対する防御を誘導するためのシグナル因子としても重要な働きをしており、その量のバランスが植物の生存に大きく関わっています。したがって、生体内におけるROSの生成と代謝の制御は、生物の種々の生命応答の根幹を担っていると考えられます。