植物のレドックス制御機構とその生理的意義

 

 シロイヌナズナNudix hydrolaseの生理機能解析から、AtNUDX6および7はどちらもNADHを生理的基質とするにも関わらず、生体内で異なる生理機能を有することが明らかになりました。また、他の研究グループにより、AtNUDX7が病原菌感染時における植物ホルモンのサリチル酸蓄積の抑制に機能すると報告されてます。これらの事実から、細胞内のNADH代謝はAtNUDX6および7により厳密に制御されていることは明らかですが、それぞれの酵素によるNADH代謝がどのようにして全く異なる生理機能を発揮しているかについては不明です。

 また、AtNUDX19はNADPHの代謝制御を介して、光合成とストレス応答・防御系と植物ホルモンシグナリング経路のバランス制御に機能していることも明らかになりました。これらの事実から、各オルガネラでのNAD(P)Hの分解系による細胞内レドックスバランス制御の重要性は明確であり、特に、AtNUDX6および7による細胞質でのNADH代謝は、AtNUDX19による葉緑体内でのNADPH代謝を始めとする細胞内レドックス制御システムにより発信されたレドックスシグナルを統括する「インテグレーター」としての役割を果たしている可能性があります。

 そこで、細胞内NADHレベルが段階的に増加しているAtNUDX6および7のシングルおよびダブル遺伝子破壊株を用いたトランスクリプトーム解析を行った結果、細胞内NADHレベルと発現レベルが正もしくは負に相関している遺伝子(NADH-responsive gene, NRG)を多数同定しました。現在、それらNRGの生理機能解析やNADHと既報の抗酸化物質によるレドックス制御機構の関係について解析を進めています。